11月, 2025年
豊田泰弘 油絵展
豊田泰弘 油絵展
2025年11月8日(土)~11月30日(日)<11:00~17:30>
御代田 アルテ ギャラリー
<作家在廊日 11月8日(土)11:00~17:30、9日(日)11:00~15:00>
※休廊日 火・水曜日
豊田泰弘の作品は注目とクローズアップによる美の創造です。
私たちが必ずと言ってよいほど見知っていて珍しくもない対象を、あたかも始めて出会うものであるかのように、新鮮で意味深く、何かのシンボルであるかのように描く豊田のスタイルは、私たちの日常生活の中に潜んでいる美しいものに気付くための案内役を果たしているように思えます。
制作に際し作家は、見たもの、体験したもの、を一旦頭に仕舞い込んで、そのイメージと感触が発酵するのを待って作品に仕上げてゆく方法をとります。醗酵させる場は、作家の内なる醸造所です。なぜ発酵させるのか、、、。そうすることで私たちが日々の暮らしの中で出会う、様々なたいせつなものの美しさが残ってゆくからです。ですから作品を鑑賞する私たちは、現実のイメージに加わった、えもいわれぬ醗酵の味わいを楽しむことが出来るのです。その味が豊田作品を特徴づけるものであり、私たちが魅力を感じるところとなるのです。身体に摂り入れる食べ物を熟成させ、時間を味に加えて楽しむように、豊田作品においても描かれた作品が宿している時間の作用が魅力となっています。
そしてその作品には、ある日ある時の情景を記録して残しておきたいと思う作家の強い意志を感じます。それは、今ここの記録の場合も有り、いつかどこかでの記憶を記録する場合もあります。描かれた作品をしばらく眺めていると、「いま、ここ」と「いつか、どこか」の境界が消えてゆき「なつかしさ」の情がふつふつと沸きあがり、世界に対する親密な気持ちが高まってゆきます。
作品力を高めるために、豊田はサンドマチエール(微細な画材用の砂)を下地に使い、光の粒子をキャンバスに重ねるように油絵具を使って手で描きます。そのため作品の微細な表面では光がまるく反射して美しい階調をみせ、観る者の懐かしく遠い記憶を呼び起こします。
豊田作品に感じられる美的情感は、まさに絵画によって私たちにもたらされるものであり、それを観る私たちは、ほのぼのとした生の充実感を覚えるのです。作家の、たいせつな、美しい、時々の記録。それに私たちのこころが共鳴します。豊田泰弘作品は絵画にとって重要な共感できる作品の質を備えています。

「サニーデイズ,2025」 油彩、サンドマチエール、キャンバス 80x80cm



