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作品
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作家について
ナカムラミオの作品について
キャンバスにアクリル絵具で描かれるナカムラミオの作品では、描かれている物の形がはっきりしません。私たちは、それが何であるかを類推するでしょうが、既にこの段階でナカムラミオ作品の面白さと、意味に触れることができます。
次に、色が微妙です。何色と識別しにくい色彩。特に地色となるのは和色の裏葉柳を思わせ、その泥混感と相まって、私たちが生活している場の拡がりをイメージさせています。日本的なるものへの意識がどれほどかは分かりませんが、西洋的遠近法が用いられることなく空間の広がりが表現されていて、観る者が三次元感覚を抱くこともできます。それを実現しているのは、筆を持つ手が生み出す微妙な色彩の差異によるものであると思われます。加えて、画面上の「かたち」の配置や色彩のニュアンスによって、広がりだけでなく、時間をも感じさせます。
ナカムラミオの作品は、まるで手が呼吸するように動いて描かれた記録として存在しているような、新鮮な印象を与えています。頭で考え、設計したことを形にして示そうという取組み方ではなく、無意識の領域までを含めた、こんこんと湧き上がる生のエネルギーの諸相を、キャンバスの上に絵の具と筆で表出し、世界に繋ぎ留めようとする、生きている命のひとつの営みのようにも見えます。
乾くのに時間が掛かる油絵具ではなくアクリルを用いるのも、ダイナミックなエネルギーを素早く留めようとするナカムラミオ作品にとっては必然的なことです。彼の描くエネルギーの方向付けには、作家の世界とのかかわり方、その染みの様な記憶の蓄積によって導かれる要素が少なからず作用していると思われます。
曖昧で、はっきりと名付けることのできないナカムラミオの作品のイメージには、そのような背景が感じられるがゆえに、音楽的な要素があり、それを目で聞くことができ、身体の内部から湧き起るものとの共鳴感が体験できるのだとも言えるでしょう。
一つ一つの作品はどれも新鮮で、この世界に生まれ出てきた新たな記録として存在し始めます。そしてナカムラミオの作品の面白いところは、その新たに生まれ出てきたものが既に消滅と不在のイメージを含んでいるようにも見えるところです。それは画面から感じられる動きが予感させるものでもあるし、作家の世界観の一部がはみ出すように描かれてしまっているからかもしれません。そこがナカムラミオの作品に、軽快感と共に深い未知なるものを感じさせる所以であると思われます。
ナカムラミオの作品には、宇宙との交感のようなものが感じられる一瞬があるかもしれない、との期待感を抱いてもよいと言えるのではないでしょうか。
少なくとも、私達に絵画を見る楽しみを用意してくれていることは確かなことです。